相談事例
相談事例

◇ 労働基準法関係

Q.
当社には労働組合がありません。そのため、労働者の過半数を代表する者と時間外・休日労働協定(36協定)を締結し届出ています。過半数代表者の選出方法は、どのようにすればよいでしょうか?
A.
時間外・休日労働協定(36協定)の労働者側の当事者は定められています。その事業所に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においては労働組合、労働組合がない場合、または労働組合があっても労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)が36協定の労働者側の当事者となり書面による協定をします。

過半数代表者については、監督又は管理の地位にある者ではないこと、協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法により選出される者であることの2つの要件を満たさなければなりません。

過半数代表者は、その事業所において時間外労働又は休日労働の対象となる労働者の過半数ではなく、事業所に使用されるすべての労働者の過半数であり、その事業所の全労働者となります。つまり時間外・休日労働が予定されていないパートタイマーや管理職手当などの支給を受け時間外等の割増賃金が支給されない管理監督者も労働者に含まれます。

Q.
当社はパートタイマーの勤務時間、勤務日は個別に定めています。1日6時間、週4日勤務で週24時間のパートは比例付与の日数の年次有給休暇が付与となりますが、これより労働時間が短い1日4時間、週5日勤務で週20時間のパートが通常の労働者と同じ日数の年次有給休暇になることに疑問があります。週の勤務時間が30時間未満は比例付与の日数になるのではないでしょうか。
A.
パートタイマーなど通常の労働者に比べ所定労働時間の少ない労働者に対しては、通常の所定労働日数との比率に応じた年次有給休暇を比例付与することにしています。比例付与の対象となるのは、@1週間の所定労働日数が4日以下の者、A週以外の期間で所定労働日数が定められている場合には1年間の所定労働日数が216日以下の者です。

ただし週の所定労働日数が少なくても、1日の労働時間が長く週の所定労働時間が30時間以上の者は比例付与の対象とならず、通常の労働者と同じ日数の年次有給休暇を付与しなければなりません。1日8時間、週4日勤務で週32時間、1日10時間、週3日勤務で週30時間の者などです。

比例付与の対象者は、「1週間の所定労働日数が4日以下(1年間の所定労働日数が216日以下)」と「週所定労働時間が30時間未満」の2つの要件を満たす者です。

1日6時間、週4日働くパートの場合、週所定労働時間は24時間、週の所定労働日数が4日以下となりますので、比例付与の日数の年次有給休暇付与となります。

しかし1日の所定労働時間が短くても、週5日以上働いている者は比例付与の対象ではなく通常の労働者と同じ日数の年次有給休暇付与となります。

つまり1日4時間、週5日働くパートの場合、週の所定労働時間は20時間でも所定労働日数が5日以上ですから、通常の労働者と同じ日数の年休付与となります。

比例付与の対象となるかどうかは、1日の勤務時間の短い長いに関係なく、所定労働日数が少ないか否かで判断されるからです。
 

◇ 雇用保険関係

Q.
定年到達者を再雇用する予定ですが本人と話し合った結果、週3日の短時間勤務を適用することになりました。雇用保険上は短時間被保険者になりますが、高年齢継続給付は一般の被保険者と同様に受給できるのでしょうか。
A.
高年齢雇用継続給付は60歳以降の賃金額が定年時より大幅に低下した場合に支給されます。定年到達後に失業給付を受けずに継続雇用されたときは高年齢雇用継続基本給付金、失業給付を受けた後再就職したときは高年齢再就職給付金が支給されます。

高年齢雇用継続給付の対象になるのは「被保険者(短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除く)」と規定されています。「短時間被保険者」か「それ以外の被保険者」かは、関係ありません。賃率低下でなく、労働時間の減少に伴い賃金総額が低下した場合にも高年齢継続給付の対象になります。60歳到達後(60歳に達した日の属する月から65歳に達する日の属する月までの期間)の賃金が、60歳到達時の賃金と比べ、75%未満にダウンするという条件を満たせば、高年齢雇用継続給付が支給されます。また、厚生年金の被保険者でなくなっても給付の対象になります。
 

◇ 健康保険関係

Q.
当社の従業員Aの妻は、この10月からパートタイマーとして働くことになりました。Aの妻は健康保険上Aの被扶養者となっていますが、年間収入が130万円未満であれば被扶養者のままでよいのでしょうか。
A.
社会保険(健保・厚年)の適用事業所に雇用される者は、原則としてすべて被保険者になりますが、パートタイマー等短時間就労者については、@1日または1週間の所定労働時間が一般社員の4分の3以上であること、A1ヶ月の所定労働日数が一般社員の4分の3以上であること、の両方に該当するときに限って被保険者となります。

収入では「年間収入が130万円未満(60歳以上の者は180万円未満)であり、かつ被保険者の年間収入の2分の1未満」であれば被扶養者となります。

Aの妻の所定労働時間または所定労働日数が一般社員の4分の3未満で、年間収入が130万円未満の場合は、被保険者となりませんし、被扶養者の資格も失いませんので、そのまま被扶養者となります。

年収が130万円未満でも、「4分の3」以上の要件と満たしていれば被保険者になれますので、被扶養者の身分を失います。
 

◇ 厚生年金関係

Q.
当社では嘱託の賃金を一律60歳定年時の6割と定めています。仮にこの嘱託に対し、月例賃金のほかに賞与を支給した場合は総報酬が増加しますが、老齢厚生年金の調整率は6%のままで変わりないのでしょうか?
A.
高年齢雇用継続給付は、60歳以降の賃金が60歳到達時の75%未満に低下した人に対し賃金の一定割合を給付する制度です。給付額は支給月の賃金に所定の支給率をかけて計算します。賃金水準が60歳到達時の61%未満のとき支給率は15%です。61%以上75%未満のとき支給率は15%から一定の率を減じて算出します。

高年齢雇用継続給付を受けたときは、老齢厚生年金が減額されます。在職老齢年金制度により年金が一部ストップしている人も、そこからさらに一定額が減額(併給調整)されます。その調整率は、標準報酬月額が60歳到達時賃金の61%未満のときは6%、61%以上75%未満のときは6%から一定の率を減じて算出します。

現在、在職老齢厚生年金を計算する際には「総報酬月額相当額」という言葉が使われます。これは標準報酬月額に「過去1年に受けた標準賞与額の12分の1」を加算した額です。つまり、標準報酬月額が同じでもその人が受ける賞与の額によって総報酬月額相当額に違いが出て、それがさらに年金額に跳ね返るというシステムが取られています。

しかし、高年齢雇用継続給付を受ける場合に老齢厚生年金を減額する調整率はあくまでも標準報酬月額と60歳到達時賃金の比率により定まり、たとえ賞与を支払ったとしても、影響を受けることはありません。